マーケティングには製造・販売・宣伝など一連のプロセスがありますが、その中でも最初におこなうのがマーケティングリサーチ(市場調査)です。
「この商品・サービスを買ってください」と企業側から売り込まなくても、ユーザーのほうから「これが欲しい」と、自然に手に取ってもらうようにするためには、ユーザーが求めているものを知ることが欠かせません。
さまざまな調査でユーザーのニーズを把握し、商品が売れる仕組みをつくる「マーケティングリサーチ」はマーケティングのプロセスの中でも大変重要な役割を担っています。
コロナ禍によって働き方やライフスタイル、価値観など多くのものが変わりましたので、マーケティングリサーチについても、改めて見直す必要があります。
この記事では、マーケティングリサーチの目的、代表的な手法や手順、事例など詳しくご紹介していきます。今までとは異なる、withコロナ時代のマーケティングリサーチに目を向けてみてください。
目次
マーケティングリサーチ(市場調査)とは?
マーケティングリサーチとは商品開発や販売戦略など、一連の企業活動のためにユーザーから情報を集めることを指し、企業が社内で検討するだけでは得ることができない「実際のユーザーの視点」を知ることを目的として行われます。
売りたい商品を「売れる」商品・サービスにするためにはマーケティングリサーチによって、より具体的な仮説を立てる必要があります。
マーケティングリサーチの手法にはさまざまなものがありますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、これからのデータ収集はオンライン化・デジタル化が今まで以上に進んでいくことになるでしょう。
今まで蓄積してきた知見や常識だけでなく、新しい手法も取り入れ、今の時代に合ったマーケティングリサーチを行うことが大切になってきます。
現代では年々SNSの普及率が高まっており、SNSマーケティングが欠かせない要素の一つとなっていますが、SNSマーケティングにおいてもマーケティングリサーチは非常に重要です。
マーケティングリサーチの手法
マーケティングリサーチの手法はいくつもありますが、それらは「定量調査」と「定性調査」の2つに分けることができます。
数値を目で見る「定量調査」
定量調査とは、アンケート結果などを表やグラフにし視覚的にわかりやすくした調査のことです。
自社や競合のサービス・商品の使用実態、消費者の意識調査などに重用され、数値を目で見ながらデータを分析し、マーケティングに活かすことが可能です。
また、傾向や全体の構造を把握しやすいのも定量調査の特徴です。
【メリット】
- 選択肢があるため回答しやすい
- ネットリサーチの登場によりコストをかけず素早い調査が可能になった
- グラフなどで見られるためわかりやすい
- 数字があることで説得力が増す
【デメリット】
- 数値を出したとしても、分析し活用できないと意味がない
- 対象となるパネル登録者が出現するとは限らない
- 調査設計によっては結果が大きく変わってしまう
- 異常値などイレギュラーにより傾向が変化してしまう
ユーザーの本音を探る「定性調査」
定性調査とはユーザーが商品について持っているイメージ、購入を決める時の気持ち、意見などを集め、ユーザーの深層心理を知ることが目的として行われます。
インタビュー形式の調査のほか、調査員が店頭(現場)でユーザーの行動を観察する方法やユーザーの生活現場に出向いて観察する行動観察調査などさまざまな手法を用い、定量調査で出した数値の真意を探ることが定性調査の役割でもあります。
質問に対して必ずしもユーザーが本音を打ち明けてくれるとは限らず、また、場合によってはユーザー自身も気づいていない潜在的な欲求が隠されていることもあるため、ターゲティングをしっかりと行うだけではなく、調査方法も最適なものを選定する必要があります。
【メリット】
- 潜在的なニーズを探ることができる
- よりリアリティのある情報を得られる
- 多様な生活様式、意識、視点など個性豊かな発見がある
- 観察系の調査の場合、言葉ではなくユーザーの本能的な行動から新しい発見ができる
【デメリット】
- コストや手間がかかる
- テーマによってはユーザーの本音を引き出すのが難しくなる
- インタビューや調査設計によって結果が大きく左右される
- 数が少ないため、統計的には信頼性に欠ける
マーケティングリサーチの代表的な調査方法
マーケティングリサーチの手法は多岐にわたります。ここからはその中でも、代表的な手法をいくつかご紹介します。
手法 | 内容 |
---|---|
アンケート (定量調査) |
最も一般的な手法で、インターネットや紙面を活用して用意した質問に対する回答を集計する。無料ツールも多く、実践しやすい |
電話調査 (定量調査) |
電話で質問する手法で、訪問調査よりもコストをかけず、かつ、インターネットや紙面では得られない意見を聞ける |
訪問調査 (定性調査) |
地域ごとの傾向や意識を測るのに適している。調査員が対象者の自宅に出向いて直接質問するため、調査会社に依頼するのが一般的 |
MROC調査 (定性調査) |
特定のテーマに興味や関心がある対象者を集め、対象者同士でディスカッションを行う手法で、対象者同士の会話から意識を探ることが可能 |
ソーシャルリスニング (定量・定性調査) |
SNSマーケティングの手法の一つで、SNS上の発言を集める方法です。企業から質問した内容ではなく、自然発生的な内容から分析できるため、バイアスがかかっていない生の声を聞くことができる |
マーケティングリサーチの手順
ここからは、マーケティングリサーチの手順を見ていきましょう。
マーケティングリサーチはただ調査をするだけではなく、調査結果を製品開発・改良、販売、宣伝、ブランディングなどに活かすことが目的です。
マーケティングリサーチの際にターゲティングを間違えてしまうと、せっかく得られたデータが無駄になってしまう可能性もあります。
マーケティングリサーチを行う目的とブレがないよう、進めていきましょう。
- 企画…調査目的、調査対象、調査方法を決める。
- 設計…調査で使用するアンケートフォームや質問項目を作成する
- 実施…作成したアンケートフォームなどを使い、実際にマーケティングリサーチを行う
- 集計…結果の集計を行う
- 分析と評価…集計結果を分析し、的確なマーケティングリサーチが行えたかの評価を行う
マーケティングリサーチは調べて終わりではなく、集計後の分析と評価が重要です。
設定した目的を成し遂げることができたのか、改善点や反省点も挙げることで、次のマーケティングリサーチに活かすことができます。
SNSを活用したマーケティングリサーチ分析例
従来の分析手法に加え、現代において絶対に欠かすことができないのが、SNSを活用したマーケティングリサーチです。
InstagramやTwitterなどのSNSを通し、個人が情報を発信することが一般的になりました。
このユーザー自身が投稿したUGC(User Generated Content)には、日常の何気ないコメントや、具体的な利用シーンなど、バイアスのない本音に近い情報であると捉え、注目度が高まっています。
AIQ株式会社では、特許技術であるプロファイリングAIを用いたインサイトマーケーティングリサーチサービス「SOCIAL PROFILING(ソーシャルプロファイリング)」によって、対象となるアカウントやキーワードで投稿した画像・文章を分析し、リアルな利用シーンの可視化、購買に至った背景(インサイト)の解析などを行うことが可能です。
ここからはInstagramで「#鍋の季節」と「#鍋の〆」をというハッシュタグを投稿している方の分析結果の例をご紹介します。
投稿時間
鍋といえば夕食の定番メニューということもあり、いずれのハッシュタグも17時頃から投稿が増えはじめ、20、21時頃にピークを迎えます。
時間帯から推測するに食後すぐに投稿されていると考えられ、リアルタイムで投稿しているユーザーが多いようです。
20時からの3時間はもっとも利用者の多いゴールデンタイムであるため、投稿も目にとまりやすくなるでしょう。
ユーザーの属性
「#鍋の季節」と「#鍋の〆」ということで主婦の方が多いのか、全体の半数以上を30代女性が占めています。
女性に比べると男性の割合は少なく見えますが、20代〜30代の男性ユーザーも一定数「#鍋の季節」と「#鍋の〆」のハッシュタグを活用しています。
男性の投稿があることは鍋はお酒に合うこと、飲み会の定番メニューであること、簡単につくれることなどさまざまな理由が考えられます。
都道府県別の投稿割合
面白いのが都道府県別の投稿割合です。「#鍋の季節」は北海道、兵庫県、三重県、鳥取県、鹿児島県の順に投稿数が多いという結果に。
一方「#鍋の〆」では福岡県、京都府、青森県、長野県、秋田県という順に投稿数が多くなりました。同じ鍋関連のハッシュタグでも都道府県で違いがあるということがわかります。
「#鍋の〆」でトップの福岡県には『茅乃舎だし』で知られる久原本家があり、久原醤油のCMが多いことも投稿数に影響しているのかもしれません。
関連ハッシュタグ
「#鍋の季節」と「#鍋の〆」に関連するハッシュタグをプロファイリングAIで分析した結果が上記の画像です。
関連する人気の高いハッシュタグが一目でわかるようになっており、「#鍋の季節」では映える鍋料理の画像のハッシュタグ「#鍋スタグラム」「#鍋パーティー」など賑やかな雰囲気のハッシュタグも見られます。
「#鍋の〆」では20代女性は10%だったのに対し、「#鍋の季節」では20代女性が19%でしたが、関連ハッシュタグからもその差の理由が窺えるようになっています。
「#鍋の〆」では「#カルディ」「#サリ麺」「#鍋の素」「#出汁」など、鍋の〆に使う材料に関連したハッシュタグも見られました。
まとめ
「売りたい商品」を「売れる商品」にする。そのための戦略が、マーケティングリサーチです。
また、マーケティングリサーチはただ単に商品やサービスを売るためのものではなく、結果としてユーザーとのつながりを強めるものでもあります。
SNSマーケティングが活発な現代において課題や問題を抱えている企業は少なくありませんが、AIQがご提供するSOCIAL PROFILINGを活用すればあらゆる課題や問題を解決可能です。
「ソーシャルデータをうまく活用したい」「マーケティング施策をより効率よく進めたい」とお考えのご担当者様はぜひお気軽にお問い合わせください。